On The Sunny Side Of The Street の4小節目
私の限られた経験ですが、ジャム・セッションにおいて、この部分は、5小節目のVIm7(これは平行調のトニック・マイナーというにはやや大袈裟でしょうか?)への(広義の)「トゥ・ファイブ」(すなわち、転調でないというならセカンダリ・ドミナントとそれに先行するハーフ・ディミニッシュ・コード)であるVIIm7(♭5)-III7 と演奏されるケースが多いようです。
でも本当にそうかな、と違和感を覚えて調べてみました。
- 1930年、Ted Lewis:V7
- 1930年代後半、Lionel Hampton:V7-♯Vdim7
- 1940年、Nat King Cole:V7-III7/VII?
- 1940年代前半、Benny Goodman:微妙だけどたぶんVIIm7(♭5)-III7
- 1944年、Billie Holiday:ちょっと微妙だが V7-♯Vdim7?
- 1945年、Tommy Dorsey:V7-III7
- 1952年、Lester Young-Oscar Peterson:V7-♯Vdim7
- 1955年、Erroll Garner:V7-♯Vdim7
- 1956年、Louis Armstrong:V7-III7
- 1957年、Sonny Rollins-Dizzy Gillespie / Sonny Side Up:V7-♯Vdim7
- 1958年、Duke Ellington(feat. Johnny Hodges):V7(次の小節はなんとImaj7)
- 1961年、Frank Sinatra / Come Swing With Me!:III7やVIIm7(♭5)-III7(12小節目)
- 1963年、Ella Fitzgerald-Count Basie:V7-♯Vdim7
- 1986年、Kenny Barron-Red Mitchell:VIIm7(♭5)-III7
どっちが正解とか不正解というわけではないけれども、あまり(広義の)「トゥ・ファイブ」にとらわれず、たまには、V7-♯Vdim7という進行で演奏してみてはどうかと個人的には思います。あくまで趣味や好みの問題です。
スケール的には、VIIm7(♭5)はロクリアンで、V7のミクソリディアンと共通、また、♯Vdim7も、ディミニッシュ・スケールを用いるピュアな(?)ディミニッシュではなく、わざわざ回りくどくかくなら、III7(♭9)/♯V ってことなので(私は、「偽ディミニッシュ」と勝手に呼んでいる)、これも実質同じコード。
すなわち、譜面を見ずに演奏して、ソロイスト、ピアニスト、ギタリスト、ベーシストがバラバラに解釈しても、サウンドが壊れる心配をしなくてもよいと思います。
ベースがどういうラインを弾くかでコード表記が決まるようなところがあります。このようなところにおいて、ピアニストは左手でコードのルートを強要せずにベーシストの判断に任せて欲しいと思います。もっとも気の利かないベース弾きもいると思うのでお互い様ですかね。