吉岡直樹のジャズ・スタンダード研究

ジャズ・スタンダードについてひたすら書きます。

Old Folks の17小節目

ブリッジ(サビ)の1小節目であります。

ここはいつも、Imaj7 か Vm7(次の小節と合わせてVm7-I7)で悩みます。したがってどちらが来てもよいようにベーシストの私はトニックを弾きます。そうすれば、Vm7が来ても、Vm7/I = I7sus49 のように響くからです。

さっそくチェックしてみます。

  • 1938年、Larry Clinton 楽団(歌、Bea Wein)、おそらくこの曲の初録音:Imaj7-V7(♯5)
  • 1950年代前半、Charlie Parker のVerve 盤(歌のコーラス有):Imaj7
  • 1957年、Lou Donaldson/Wailing With Lou:Imaj7
  • 1957年、Jackie McLean/McLean's Scene:Imaj7(ベースはI7っぽいラインを弾いているけれども)
  • 1958年、Wes Montgomery:Imaj7-V7
  • 1959年、Kenny Dorham/Quiet Kenny:Imaj7-V7
  • 1959年、Max Roach:Imaj7
  • 1960年、Jimmy Smith/Open House Plain Talk:Imaj7-V7
  • 1961年、Miles Davis/Someday My Prince Will Come:Imaj7-V7
  • 1962年、Oscar Peterson/Live at the London House:Imaj7-V7
  • 1974年、Dexter Gordon/The Apartment:Imaj7-V7
  • 1980年、Ernestine Anderson/Never Make Your Move Too Soon:I7
  • 1996年、Ulf Wakenius/Enchanted Moments:Imaj7 / VIm7 ♭VI7

あれ、おかしいな。以前調査したときに、もう少しVm7やI7のものがあったように記憶しているのだけれども。

というわけで、もう少しサンプルがあったほうがよいと思いますが、あっさりと決着がついてしまいました

ただ、このブログの目的は白黒つけることではなく、むしろ、コードの多様性を認めた上で何が正しいと決めつけるのではなくもう少しハーモニーに対して慎重にしては、と提案することにあることを最後に申し伝えたいと思います。

ジャズにおけるリハーモナイズは、意外性や、誰もおもいつかなったコードをつけることにあるので、最初にVm7にした人は偉い(のか?)としても、それは、曲集にあるからといって無批判にVm7で演奏すること、あるいは、自分の覚えているコードと異なるからといって他人の書いた譜面を無視したり書き換えたりすることとは決定的に異なることを私は申し上げたいと思っています。

多様性を認めつつもクリエイティブに演奏したいですね。それでも、Imaj7-V7というコードの可能性をあらためて感じました。1930年代の初録音でそれをしていたとは! まだまだ勉強が足りません。