吉岡直樹のジャズ・スタンダード研究

ジャズ・スタンダードについてひたすら書きます。

How Deep Is The Ocean の13-16小節目

この曲のコード進行のなかでもっともバリエーションが多い箇所ではないかと思います。

参照した音源がすべてCマイナー・キーでの録音だったので、コードは実音で書きました。

  • 1947年?、Charlie Parker:C♭7 | C♭7 | Cm7(♭5) F7 | Dm7(♭5) G7 |
  • 1951年、Miles Davis:C♭7 | C♭7 | Fm7 | D(♭5) G7 |(1コーラス目のベースが曖昧だが全体的にはこうだと思われる)
  • 1959年、John Coltrane and Prestige All Stars:C♭7 | C♭7 | Dm7(♭5) G7 |(15小節目のDm7(♭5)は厳密にはストレート・メロディにはあわない)
  • 1961年、Bill Evans/Explorations:D♭m7 G♭7 | Cm7(♭5) F7 | E7 E♭7 | D7 D♭7 | (15小節目のE7はストレート・メロディにはあわない)
  • 1980年、Archie Shepp/Looking At Bird:G♭m7 C♭7 | F7alt B♭7 | Dm7(♭5) G7 |
  • 1981年、Art Blakey and the Jazz Messengers/Straight Ahead:C7alt | F7 | Fm7 Fm7/E♭ | Dm7(♭5) G7 | のようだが、後テーマは、Cm7(♭5)のようにも聞こえる。
  • 1990年、Jim Hall/Live At Town Hall Vol. 2:D♭m7 G♭7 | Cm7 F7 | B♭7 E♭7 | Dm7(♭5) G7 |
  • 1991年、Chick Corea Akoustic Band/Alive:D♭m7 G♭7 | F7 Emaj7 | Cm7(♭5) F7 | B♭7 Bdim7 |
  • 1994年、Keith Jarrett/The Complete Bule Note Recordings:C7alt F7 | B♭7 A7 | A♭7 G7

ちょっとサンプルが少ないのでなんともいえませんが、1950年代くらいまでは、13-14小節目はC♭7(B7と書いてもよいのですが)で演奏していたようですが、1960年ころから様々にリハーモナイズすることが模索されたようです。

厳密にはストレート・メロディにあわないものもありますが、うまくフェイクして対処していたり、あるいは半音のアプローチだからよいと解釈したものと思われたりと、そこはいろいろです。

それから興味深いのは、15小節前半を、Cをルートとして演奏する場合、Cm7(♭5) とすべきか C7alt とすべきかという問題があります。C7alt に対応するオルタード・スケールには、Cm7(♭5)のコード・トーンがすべて含まれます。

一般に、ある一定のテンポ以上で演奏する場合、ハーフ・ディミニッシュ・コードが、主にソロ中においてオルタードのドミナント・セブンスに置き換えらるケースがあると考えていました。

この曲の場合、メロディのFはC7altと矛盾するのですが、アクセントはG♭のほうですし、一定のテンポで演奏する場合はこのようなことが比較的起こる(例えば1981年のブレイキーの演奏)と考えて良さそうです。

この現象については、また別の曲の項目で機会があれば説明できたら面白いと思います。