吉岡直樹のジャズ・スタンダード研究

ジャズ・スタンダードについてひたすら書きます。

I'll Be Seeing You の2小節目

メロディは階名「レドシド」。出版された譜面では、シンコペーションされていて「レ」が8分音符、次の「ド」が1拍目ウラの4分音符、「シ」が2拍目ウラの8分音符と3拍目4分音符のタイ、最後の「ド」が4拍目の4分音符になっています。

さて、コードですが、この前後を含めて、Imaj7 | III7 | IIm7 | という譜面を持ってきたリーダーがいました。ただ、個人的にはちょっとやりにくい。III7-IVmaj7 という進行はあるので、 IIm7 をサブドミナント・メジャー代理だと理解できなくもないが、それでも III7-IIm7 という進行はあまり見かけないのではないかと思います。

そこで、例によっていくつか音源にあたってみることにしましょう。

  • 1944年、Bing Crosby:IIIm7-♭IIIdim7
  • 1944年、Tommy Dorsey-Frank Sinatra:III7
  • 1944年? Billie Holiday:III7
  • 1960年、Dinah Shore-Andre Previn/Dinah Sings Previn Plays:Imaj7のまま。2コーラス目は、1小節目とともにI/Vとしている。
  • 1961年、Frank Sinatra/I Remember Tommy:III7
  • 1961年、Sarah Vaughan/Soft And Sassy:III7-VIm7
  • 1963年、Julie London/”Julie / Love On The Rocks”:Imaj7(♯5)
  • 1963年、Sarah Vaughan/Sassy Swings The Tivoli: Imaj7(♯5)
  • 1984年、Bud Shank/This Bud's For You:テーマは1小節目とともにI/V、ソロは基本的にVIm7。
  • 1985年、Mel Torme-George Shearing/An Elegant Evening:III7
  • 1991年、Holly Cole/Blame It On My Youth:III7 VIm7
  • 1991年、Rickie Lee Jones/Pop Pop:III7
  • 1992年、Tony Bennett:Perfectly Frank:III7
  • 1997年、Chris Cheek/I Wish I Knew:IIIm7-♭IIIdim7
  • 1998年、Rahsaan Roland Kirk/A Standing Eight:IIIm7 VI7(VI7altのように弾いているが、厳密にはストレート・メロディに合わない)
  • 1999年、Brad Mehldau/The Art Of The Trio, Vol.4:III7
  • 2002年、Fred Hersch/Live At Village Vanguard:VIm7
  • 2002年、Rod Stewart:It Had to Be You...: The Great American Songbook:Imaj7(♯5)。3小節目はVI/I で、しばらくトニックのペダル・ポイントとなっている。

なんだか偏っている気もしますがお許しを(気が向いたら追記したいと思います)。

この小節を III7 として Imaj7-III7-IVmaj7のように演奏している録音はざっと調べた中では一番多かったです。しかも1944年頃からの伝統に則ったコードだったのですね。というわけで、ちょっとやりにくいなんて言ってはいけなかったと反省。

それでも全体の4割程度でした。ほかにもいろいろと演奏のしようがあるのもまた事実。個人的に、素直だと思うのがIIIm7-♭IIIdim7。VIm7は素直すぎるかなあ。III7-VIm7も好みですがテンポによるかもしれません。Imaj7(♯5)もなるほどと思わせるものがあり、III7と関連が深いのかもしれません。