吉岡直樹のジャズ・スタンダード研究

ジャズ・スタンダードについてひたすら書きます。

All The Things You Are の21小節目

ブリッジの後半です。転調しているので、23小節目をImaj7(全体のキーをFm/A♭とすればEmaj7)とした音程で書いています。

いわゆる、メジャー・トゥ・ファイブ・ワンなのですが、トゥのところは、IIm7とは限らず、IIm7(♭5)となることがあります。

All The Things You Are はジャム・セッションやライブで譜面なしで演奏することの多い曲ですから、21小節目をどのように演奏すべきか、2つの選択肢を常において演奏することが大切です。

さて、実際にどのように演奏されているかチェックしてみましょう。

  • 1953年、Jazz at Massey Hall:IIm7(♭5)
  • 1955年、Hampton Hawes Trio Vol. 1:IIm7(♭5)
  • 1556年、Art Pepper / The Way It Was! :IIm7
  • 1955年、Art Tatum with Ben Webster:IIm7
  • 1957年、Stan Getz / The Soft Swing:やや曖昧な箇所もあるが、基本的に IIm7
  • 1958年、Armad Jamal / At the Parshing:IIm7。ただし前テーマに関しては II7 か。
  • 1958年、Sonny Rollins / Live at Village Vanguard Vol. 2:曖昧で断定できないがIIm7? ちなみにロリンズは次の小節をオクタトニック(いわゆる「コンディミ」)で演奏するのを好むようだ。
  • 1963年、Bill Evans \ At Shelly's Mann-Hole:IIm7(♭5)

ややサンプルが少ない気もしますが、確かに言えることはどちらで演奏することもあるということです。

そして、さらに大切なこととして、すべての録音に当てはまるわけではないにしても、大半の録音に置いて、マイナー・コードもしくはハーフ・ディミニッシュ・コードの選択は、テーマとソロの両方に置いて一貫している録音が多いということです。

メジャー・キーのIIm7はドリアン(メジャー・スケールの第2モード)が対応することはいうまでもありません。

そして、IIm7(♭5)には、ロクリアン♯2スケールが対応すると私は考えています。なぜなら、これが、そのキーのメロディック・マイナー・スケールの第2モードだからです。個人的に、メジャー・キーのIIm7(♭5)を借用和音だと安直にみなすことは安直だと考えています。

それはともかく、IIm7 と IIm7(♭5)は原則として区別すべきコードで、対応するスケールも異なりますから、ジャム・セッションなどでも、なるべく全体的にどちらのコードを採用すべきかよく聴いて判断するとともに、適切なコードを演奏することが大切です。

特に、リズム・セクションは、ソロイストと矛盾したコードワークにならないようしっかりとした対応力が求められると考えます。