吉岡直樹のジャズ・スタンダード研究

ジャズ・スタンダードについてひたすら書きます。

The Days Of Wine And Roses の10小節目

前の小節目は、Imaj7でもよいが IIIm7 とするとして、次の小節が IIm7 の場合、この小節をはさんで、「サン・ロク・ニ」になります。

それでついついIIIm7 | VI7 | IIm7 と書いてしまいがちなんですよね。私にも心当たりがありますが、頭でわかっていてもうっかり IIm7 への「広義のトゥ・ファイブ」にしてしまうことがあります。

ある高名なギタリストと演奏させてもらったときに、譜面がまさにそのようになっていました。「ありゃ?」と思いながらベース弾いていたんですが、演奏は一貫して、VI7ではなくVIm7で通しておられました。

このように、前後から、ついうっかりで、マイナー・コードとドミナント・セブンス・コードの区別を誤ってしまうケースがあります。譜面をうっかり間違えてもきちんと弾いていればよいんですが、それでも譜面を真に受けるプレイヤーもなかにはいるかもしれないし(実際、いる!)、それに、譜面ではなく演奏もうっかりを連発するピアニストやギタリストも少なくないので、そのような場合、「頼むから早く曲が終ってくれ!」というモードになります。半分は誇張ですけど。

VIもそうですが、ほかに間違いやすいのに、IIIやIIなんかもあるでしょうか。♭IIIや♭VII なんかもそうかな。IIIはハーフ・ディミニッシュなんかも絡んでくるし、♭IIIはディミニッシュと混乱することもあるでしょう。

手がかりになるのはメロディです。

一般論として

  • どれか(いずれか)1つでなくてはならないケース
  • 比較的その場で決めてもよいケース

のどちらかがありますが、この曲のこの小節の場合は、もちろん、前者です。

メロディが、階名「ドレミラ」(キーがFの場合、F-G-A-D)なので、VI7(キーがFの場合D7)では問題が起こりますね。

よく、キーがFとして、FはD7の♯9だからどっちでもよいなんて乱暴なことを言う人がいますが、それは違いますよ。♯9を含むスケールは、オルタード・スケールと、半音-全音ディミニッシュ・スケール(いわゆる「コンディミ」)の2つ。D7 に対して、前者ならD-E♭-F-F♯-A♭-B♭-C-D、後者ならD-E♭-F-F♯-G♯-A-B-C-Dであって(議論があると思いますが、半音-全音ディミニッシュはもちろん、オルタードの場合も異名同音は多少おおらかでよいと考えています)、どちらもメロディのF-G-A-Dと矛盾しています。