吉岡直樹のジャズ・スタンダード研究

ジャズ・スタンダードについてひたすら書きます。

2023-01-01から1年間の記事一覧

Black Nile のイントロ

この曲は、ウェイン・ショーターの曲の中でも比較的演奏する方なのですが、イントロは曲のなかで1回しか出てこないので、ときどき演奏していないと思い出せなくなってしまうことがあります。 で、あらためて調べてみました。 Fm7 | G♭maj7 | E♭m7 | Fm7 Gm7 …

Come Rain Or Come Shine の13-16小節目

この曲のもっともバリエーションが多い箇所ではないかと思います。 転調していると解釈できる演奏もありますが、混乱を避けるため敢えてメジャー・キーの文脈で書きます。 1950年、Sarah Vaughan/In Hi-Fi:Im6 | Vm7 | VI7 II7 V7 / | IIm7 V7 | 1954年、Di…

Polka Dots And Moonbeams の23-24小節目

この曲の譜面が配られて演奏していると、いくつか「え? そうだっけ」という箇所があります。そこで調べてみることにしました。 今回はブリッジから戻るところ。ブリッジは長3度上に転調していて、こういう箇所の度数表記は厄介だけれども、[III] が転調先(…

You'd Be So Nice To Come Home To の13-16小節目

ジャム・セッションなどでは、VIm7(♭5) | II7 | IIm7(♭5) | V7 | と演奏することが多いように思います。これは、大きく捉えると、ダブル・ドミナント(II7)とドミナント(V7) が2小節ずつということになります。 これはこれでよいのですが、どうもそうでも…

Blue Bossa の4小節目

この曲はよくジャム・セッションでも取り上げる曲で演奏する機会も多いと思います。 作者のケニー・ドーハムのリオデジャネイロでの滞在経験が作曲動機になっているようです(英語版Wikipedia記事)。したがって、タイトルの Bossa とは Bossa Nova のことだ…

I Fall In Love Too Easily の7-8小節目

先日この曲を演奏したときに、あまりこの曲を研究してこなかったことに気づきました。 この曲は、全体的にはメジャー・キーですが、平行調との行き来もあります。具体的には3小節目から12小節目、すなわち1コーラス16小節の半分以上をマイナー・キー側の文脈…

Blue Minor の21-24小節目

先日、ジャムでこの曲を演奏するにあたって譜面を渡されたのですが、23小節目のコードが A♭maj7 になっていました。 ところが、Sonny Clark のアルバム Cool Struttin' ではGm7(♭5) です(もちろん、次の小節はC7)。19小節目と混同したのかもしれませんね。…

Beautiful Love の8小節目

この曲は、ほとんどのマイナー・キーの曲と同様、平行調と行ったり来たりしますが、8小節目は、7小節目の並行メジャーのトニック・メジャーから9小節目の元のキーのトニック・マイナーへ進行するところです。 よって、8小節目は9小節目Imへのトゥ・ファイブ…

My Ideal の5-6小節目

なんてことはないのですが、譜面なしで演奏しているとどうすべきか迷うところ。 個人的には、 IIm7-V7 | IIm7-V7 | (VIm7) として、4拍目に♯Vdim7 を入れようか? IIm7-V7 | VIIm7(♭5)-III7 | IIm7-V7 | IIm7 (IIm7/I) VIIm7(♭5) III7 | IIm7-V7 | IIm7 / V7…

My One And Only Love の23-24小節目

AABA形式のブリッジ(セクションB)からセクションAに戻るところです。 ブリッジは長3度上のマイナー・キーに転調していると理解すればよいのだとは思いますが、ここは元のキーに戻るところなのであえて曲全体の(あるいはセクションAの)キーで表記します。…

Alone Together の33小節目

数え方を間違えていなければ、ブリッジの5小節目です。 曲全体としてはマイナー・キーですが、最初のセクションAの13小節目で同主調に転調し、またブリッジ後半は平行調に転調しています。 そのブリッジ前半は、大雑把に Vm7(♭5)-I7-IVm7―これは元のキー基準…

My Ideal の13小節目

よく知っているつもりで、日頃メモリー(譜面なし)で演奏できている気になっていたが、実は理解・検討が不十分だったと反省した曲。 メロディが階名で「ミソシラソドドラ」と8分音符で動いています。後半2拍が、メジャー・キーにおけるいわゆる「サン・ロク…

Just Friends の7-8小節目

この曲を知っているようで知らないと反省したのは、ここのコード進行を問われて即答できなかったときです。 市販の曲集では♭IIIm7 | ♭VI7 | とでも書いてあるのか、ジャム・セッションではそのように演奏するケースが多いようです。 All The Things You Are …

Everything Happens To Me の6小節目

特になんだというわけでもないかもしれないのですが、ちょっと思うところがあるので記事にしてみました。 1940年、Tommy Dorsey楽団とFrank Sinatraによる初録音:IIIm7-VI7 1949年、Charlie Parker with Strings:IIIm7-VI7 1950年代、Bud Powell:Imaj7-VI…

Someone To Watch Over Me の17-20小節目

この曲のブリッジの前半です。 この曲を演奏する機会は少なくありません。特に歌手の人たちは様々な譜面を持ってくることが多く、なかには「おやっ」と思うものもありますが、なかには、一体何を聞いたらこんな譜面になるのか譜面の書き手の良識を問いたくな…

Old Folks の4小節目

私が「メジャー・キーのサン・ロク問題」と呼んでいる議論。 この曲に関しては、IIIm7-VI7かIIIm7(♭5)かIII7-VI7かという議論で、加えて、この曲には当てはまらないが、中にはIII7-VIm7(一例として、記事にした I Should Lose You の28小節目がありますが、…

All Of Me の3-14小節目

ジャズで取り上げる曲は、民謡やクラシック音楽をもとにした曲を別にすれば、概ね1920年代以降に作られた曲がほとんどです。 この時代になると、純粋なマイナー・キーの曲はごくわずかで99%くらいの曲が平行調か同主調のメジャー・キーに一時的に転調します…

Lover Man の7小節目

歌入りでこの曲を演奏したときに、そういえばこの部分のコードはどうなっているのだという話になったことがありました。 気になったので改めて調べてみました。 1944年、Billie Holiday(Decca盤):♭VI7-V7 1946年、Charlie Parker(Dial盤):♭IIIm7 ♭VI7 …

Black Nile の17-18小節目

この曲の14-16小節目についてはすでに記事にしていて、ジャズ・オリジナルなのだからまずはショーターの演奏を聞こうよという内容でしたが、今回は、オリジナルを踏まえた上で、カバーの再解釈も悪くないよね、という内容です。 今回扱うのは、AABA形式のブ…

Someone To Watch Over Me の21-24小節目

この曲は全体的にコードのバリエーションがたくさんあって迷います。でも、あまり迷わない後半について書いてみようと思います。 たまに歌手の人と演奏すると、♯IVm7(♭5)-VII7 | ♯IVm7(♭5)-VII7 | IIIm7 VI7 | IIm7 V7 | のようなコードのついた譜面を渡され…

Catwalk の1-2小節目

あまり演奏しない曲なのでタイトルをみてもピンとこない方も少なくないかと思いますが、有名なマル・ウォルドロンのアルバム Left Alone (1960年)の2曲目です。 何年か前になりますが、この曲を久しぶりに聴いたとき冒頭2小節の進行について気づいたことが…

It Could Happen To You の9-10小節目と25-26小節目

ABAC形式の、セクションBとCのそれぞれ1-2小節目です。ここはまだメロディが共通しているところで(ABAB'形式ということもできるだろう)、メロディはメロディは階名で「ミミ | ミファドレ」となっています。 譜面なしで演奏するとき、ここのコードがいろい…

Moon River のターンアラウンド

『ティファニーで朝食を』でオードリー・ヘプバーンが歌って有名になったそうで(実は見ていない)、状況によってはリクエストいただいて演奏することが多い曲です。メロディもコードもシンプルで覚えやすいのですが、ターンアラウンドをどうするか、という…

Black Nile の14-16小節目

ウェイン・ショーターの1964年録音のアルバム Night Dreamer に収録されている代表曲のひとつです。AABA形式の2回目のセクションAの後ろ3小節なのですが、ここは、1回目や3回目のセクションAとメロディやコードが異なります。 しかし、アマチュアのジャム・…

I'll Close My Eyes の27-28小節目

なんともないところなのですが、演奏していて違和感があったので調べてみました。 IIIm7 | VI7 | と書いてある譜面だったのですが、いやまてよ、III7 | VI7 | だったかなとも思ったり、トニックから始まっていたっけなと思い直したりしたもので。 1957年、Di…

Lover Man の16小節目

AABA形式の、2回目のAの最後の小節、すなわち、ブリッジの直前です。 この曲は(すなわち、セクションAは)、マイナー・キーのトニックで始まって平行調関係にあるトニック・メジャーで終わります。以下、便宜上、メジャー・キー側のトニックを I として表記…

All The Things You Are の21小節目

ブリッジの後半です。転調しているので、23小節目をImaj7(全体のキーをFm/A♭とすればEmaj7)とした音程で書いています。 いわゆる、メジャー・トゥ・ファイブ・ワンなのですが、トゥのところは、IIm7とは限らず、IIm7(♭5)となることがあります。 All The Th…

I'll Be Seeing You の2小節目

メロディは階名「レドシド」。出版された譜面では、シンコペーションされていて「レ」が8分音符、次の「ド」が1拍目ウラの4分音符、「シ」が2拍目ウラの8分音符と3拍目4分音符のタイ、最後の「ド」が4拍目の4分音符になっています。 さて、コードですが、こ…

There Will Never Be Another You の13-14小節目

ジャム・セッションでベースを弾いていると結構迷うところです。 個人的な好みとしては、II7 | II7 | なのですが、VIm7 | II7 | としている譜面も見たことがあります。 ちょっと聞き直してみましょう。 1950年、Lionel Hampton:II7 | II7 | 1950年、Sonny S…

Isfahan の2小節目

ジャズ・オリジナルなので、実音表記としましょう。 1小節目のD♭maj7と3小節目がE♭7に挟まれているので、常識的に考えるとB♭7、あるいはB♭m7が考えられるところです。 そして、この曲の場合B♭7が妥当だと思いきや、メロディが2分音符でA-B♭と動いています。B…