吉岡直樹のジャズ・スタンダード研究

ジャズ・スタンダードについてひたすら書きます。

Black Nile の14-16小節目

ウェイン・ショーターの1964年録音のアルバム Night Dreamer に収録されている代表曲のひとつです。AABA形式の2回目のセクションAの後ろ3小節なのですが、ここは、1回目や3回目のセクションAとメロディやコードが異なります。

しかし、アマチュアのジャム・セッションではなぜか1回目・3回目のセクションAと同じメロディやコードで演奏して「あれれ?」と思うことがあります。譜面をよく見てないか、譜面が間違っているかどちらかだと思うのですが、それ以前によくショーターの演奏を聴いてほしいと思います。

ジャズ・オリジナルなので実音で書きますが、この部分の3小節は、Gm7 | A7alt | A♭7 | です。

ここで話を終えてしまってもよいのですが、本人以外の演奏も聴いてみましょう。

  • 1988年、Fred Hersch/E. T. C. :6-8小節目と同じ。
  • 1991年、Jeff Watts/Megawatts:メロディはショーターと同じく6-8小節目とは異なるが、コードはなぜか6-8小節目と同じ。
  • 1993年?、Joey Calderazzo/The Traveller:メロディは最後の1音だけ6-8小節目と変えてある。コードは6-8小節目と同じ。
  • 1993年、Vennessa Rubin/Black Nile:メロディには若干変化が加えられているが、6-8小節目と同じ。コードも6-8小節目と同じ。
  • 1995年、Joey Defrancesco:メロディはショーターと同じく6-8小節目とは異なるが、コードはなぜか同じ。
  • 2007年、Rob Parton/Just One Of Those Things:同上だが、コードについて16小節は、Am7(♭5)-D7となっている。

というわけで、カヴァー録音がこんな感じなので致し方なしといった気分になってきます。

好意的に捉えるなら、ジャズはオリジナルのメロディやコードにとらわれず、どんどん創り変えていくものともいえるのですが、ここまでどれも似たりよったりだと、個人的にはそれほどクリエイティブに評価する気も起きません。当のショーター先生も耳にした可能性もあるはずで、本人はどのように感じたのであろうか、今となってはもう確かめるすべもありません。

個人的には、ジャズ・オリジナルについて、そのまま演奏する必要はないにしても、心構えとしてきちんとオリジナルは参照したほうがよいのではないか、と考えます。