吉岡直樹のジャズ・スタンダード研究

ジャズ・スタンダードについてひたすら書きます。

Moon River のターンアラウンド

ティファニーで朝食を』でオードリー・ヘプバーンが歌って有名になったそうで(実は見ていない)、状況によってはリクエストいただいて演奏することが多い曲です。メロディもコードもシンプルで覚えやすいのですが、ターンアラウンドをどうするか、というところで意見がわかれるような気がします。

つまり、37小節目で最後のトニック・メジャーにいってから何小節かけてターンアラウンドしてコーラスの頭に戻るかという点です。主に2小節か4小節かというところでしょう。

作られたのが1960年ということで、ジャズ・スタンダードに分類するとすればかなり新しい曲で、AABAやABAC形式としてジャズでふつうに演奏しやすい曲としては最後の世代の曲というふうに私は理解しています。

さらに1960年代以降のジャズ史の流れもあって、これほど有名な曲であるにも関わらず、ジャズ・ミュージシャンによる演奏は意外と少ないです。したがって、あまり参考にはならないかもしれませんが、少し調べてみいましょう。

  • 1961年、Art Blakey/Buhaina's Delight:テーマでは、ドラムのフィルを入れるアレンジのために小節数が増えているけれども、その分を数えなければ、33小節目以降のメロディとコードを、36小節目にちょうどトニックになるよう変更している。ソロ中はテーマで引き伸ばされた小節は省略されていているが、33-36小節目についてはテーマとほぼ同様。よって1コーラスが36小節で、ターンアラウンドといえるようなものは存在しない。
  • 1961年、Grant Green/Gooden's Corner:リズムのアレンジのある4小節のターンアラウンド。4拍子で、Imaj7 | VI7 | IIm7 | ♭II7 |
  • 1963年、Nancy Willson:1コーラス歌いきりの録音なのでターンアラウンドがもともと存在しないが、アート・ブレイキーの録音のように、オリジナルの小節の数え方で36小節目でトニックになるようにアレンジされていることは興味深い。
  • 1964年頃、Louis Armstrong/Hello, Dolly!:2小節。4拍子で Imaj7 VIm7 | IIm7 V7 |
  • 1964年頃、Sinatra Sings Days of Wine and Roses, Moon River, and Other Academy Award Winners:37小節目が次のコーラスの1小節目。
  • 1964年頃、Sarah Vaughan Sings the Mancini Songbook:37小節目から12小節のヴァンプがつく。
  • 1997年、Brad Mehldau/The Art of the Trio, Vol. 2: Live at the Village Vanguard:1コーラスを36小節としている。

といわけで、ここはお好みでどうぞ、ということになりそうです。拍子、リズム、テンポにもよるかもしれません。