テーマ中は IIIm7-VI7 | IIIm7-VI7 | のことが多いですが、ソロ中は、IIIm7 | VI7 | とすることがあるということではありません。それをいうなら、1-2小節目で説明しますから。
今回の議論は、IIIm7をどのスケールで演奏するか、ということです。
原則として、メジャー・キーのIIIm7はフリジアンということになっています。特に、IIIm7がトニック代理として機能しているときはその傾向が強いといえるでしょう。
ただ、原則には例外があって、メジャー・キーであってもIIIm7がドリアンで演奏されるケースもあります。例えば、メロディとの関係にもよるのですが、エンディングで、いわゆる「ギャクジュン」になるところでのIIIm7をあえてドリアンにするがあります。IIIm7の9度のテンションがメジャー・スケールに存在しない音であるため、意外性のあるサウンドになって高揚感(?)を得ると説明することができるでしょう。
デューク・エリントン楽団のアレンジ(時代を経るごとにアレンジが過激になっていきます。例えば、トロンボーンの謎のペダルトーンとか)をきくと、この部分のIIIm7はドリアン、VI7もミクソリディアンであるようにきこえます。つまり、1-2小節目をそのまま長2度あげることで上記のような効果を狙っているのでしょう。
ほかのミュージシャンの演奏もチェックしてみました。
- 1957年、Berney Kessel/The Poll Winners:ドリアン
- 1958年、Jo Jones +2:ドリアン
- 1959年、Red Garland/At The Prelide Vol. 1:あいまい
- 1959年、Wes Montgomery Trio:ドリアン
- 1963年、Count Basie-Ella Fitzgerald/Ella And Basie:ドリアン
- 1964年、The Oscar Peterson Trio Plays:ドリアン
- 1972年、Carmen McRae/The Great American Songbook:ドリアン
- 1974年、Joe Pass/Portraits Of Duke Ellington:ドリアン
- 1985年、Cedar Walton Trio Vol. 1:ドリアン。ソロ中はどちらもあり。
- 1999年、George Mraz/Duke's Place:あいまい。ソロ中はどちらもあり。
「ドリアン」と判断したとしても、コーラスによっては解釈が曖昧だったり、あるいはフリジアンでえんそうしたり、という箇所があるにはありますが、全体的に見ると、この部分のIIIm7はいちおう基本的にはドリアンで演奏すると考えるほうが妥当なのでは、と私は考えます。