吉岡直樹のジャズ・スタンダード研究

ジャズ・スタンダードについてひたすら書きます。

Day By Day の26小節目

この曲をABAC形式とすると、ここはセクションCの2小節目です。

メロディは、前の小節から階名「ラ」の音が1拍目までタイで続いていて、2拍目以下が4分音符で階名「シドレ」です。

ここをサブドミナント・マイナーとしている譜面が多いのですが、実際はどうなんでしょう。

  • 1960年、Betty Roche/Singin' and Swingin':IVm6-♭VII7
  • 1961年、Frank Sintatra/Come Swing With Me:IIm7 / / V7
  • 1965年、Astrud Gilberto/The Shadow Of Your Smile:IIm7-V7
  • 1965年、Chris Montez/The More I See You:IIm7-V7
  • 1970年、Oscar Peterson/Hello Herbie:IVm6-♭VII7
  • 1972年、Carmen McRae/The Great American Songbook:IVm6-♭VII7
  • 1977年、Ella Fitzgerald/Montreux '77:V7

サンプルが少ないのでなんともいえませんが、

の2つに分かれました。

これは好みの問題ですが、メロディとの関係で、前者には次のような論点があると考えます。

  1. 1拍目で、メロディの階名「ラ」が続いているところに、「ラ♭」を含むサブドミナント・マイナーというコードが不適切か。
  2. 2拍目に、サブドミナント・マイナーは、そのキーに対するメロディック・メジャー・スケールの第4モード(結果的に、IVm6のルートに対するメロディック・マイナー・スケール)に基づくのであるが、メロディの階名「シ」が、対応するスケール上の階名「シ♭」と矛盾するが許されるか。

という論点があります。

前者のサブドミナント・マイナーを許容するとすれば、その理由として、メロディはのびたままであり、コードと同時に発音されないため気にならない、という理由が、また、2つ目を許容するとすれば、弱拍であることや、3拍目へのクロマティックアプローチだという主張することもできますが、しかし、直前の音からスケールの断片になっていることから、説明としてはやや苦しい気がします。

いっぽうで、後者のドミナントは前者のサブドミナント・マイナーと比べれば問題が少ないようにも思われますが、(中)強拍である3拍目に、V7のアボイドである階名「ド」が位置しているという問題があります。

1961年のシナトラの録音(アレンジはビリー・メイ)のように、この小節目の3拍目までIIm7をキープして4拍目にV7としているのは、慎重を期しているということになりますが、我々の日常的な小編成の演奏において、ピアニストやギタリストがここまで気配りできるかどうか、あるいはする必要があるか、というところはまた議論の余地がありそうです。