吉岡直樹のジャズ・スタンダード研究

ジャズ・スタンダードについてひたすら書きます。

Confirmation の10小節目

AABA形式のセクションAの2小節目はどのように演奏していますか。 キーをFとしたら、Em7(♭5)-A7 でしょうか。

チャーリー・パーカーの演奏、例えばVerve盤のものをきくと、1コーラスに3回あるセクションAのうち、2回目の2小節目である10小節目のみA7、それ以外はEm7(♭5)-A7となっていて、これはソロ・コーラス中も徹底して守られています。

これは、メロディと関係があります。

1回目と3回目のセクションAのそれぞれ2小節目(つまり、コーラスの2小節目と26小節目)の前半のメロディは8分音符でG-D-B♭-Gのようになっています。これらはすべて Em7(♭5) のコード・トーンですが、他方A7のアボイドである D を含みます。したがって、この小節は、Em7(♭5)-A7 にはマッチしますが、小節全体をA7と置き換えるのは不適切です。

一方、この記事のタイトルである10小節目、すなわち、2回目のセクションAの2小節目のメロディは、1拍目に F-G-E♭ の3つの音符が含まれています。これらのすべての音は、A7のコード・トーンもしくはテンションとして捉えることができます。

ところが、Em7(♭5) との関係を見た場合、Gはコード・トーンですが、Fに対して短9度のアボイドに、また、E♭はルートの減8度というよくわからない音程ですし、これをD♯と捉えても長7度にあたり、コードに対する音としてはどちらもふさわしくありません。E♭については、「ブルー・ノートだ」という苦しい言い訳で切り抜けるとしても、Fは、強拍である1拍目のオモテの音であり、この音をアボイドで始めることはどう考えても不適切です。

そこで、チャーリー・パーカーは、この小節全体をA7のコードを指定したものと推測されます。

個人的に、ソロ中に関してはどちらを演奏してもよいのでは、という気がしますが、パーカー先生に叱られますかね?

蛇足ながら、このA7は、メジャー・キーからみるとIII7ですが、3小節目のDm7を平行調のトニック・マイナーとみなすとV7に相当すると理解することもできるでしょう。