吉岡直樹のジャズ・スタンダード研究

ジャズ・スタンダードについてひたすら書きます。

Alone Together の42小節目

後ろから数えたほうが早いだろうって? そう、後ろから3小節目、トニック・マイナーに解決する直前です。

トニック・マイナーへ解決するところだから、ふつうにトゥ・ファイブ、すなわち、IIm7(♭5)-V7と演奏しがちですが、それではいけません。なぜなら、メロディが2分音符で階名「ド-シ」(キーがDmとするなら F-E)と動いていて、IIm7(♭5)の部分がメロディと衝突するからです。

つまり、キーがDmの場合、この小節の前半をEm7(♭5)とするならば、メロディのFは、思いっきりアボイドにあたります。だから、「よほど耳のおかしいプレイヤーではない限りそんなことはしない」なんて私も叱られたものですが(時代というのもあったかもしれないが、そのくらいインパクトのある言い方しないと、人間なかなか直らないこともある)、実際はついわかっていても私はいまだにやってしまうことがあります。しかし、それでは身体(耳)で覚えているとはいえないわけで、集中力を欠くとついつい変なコードはひとりでに避けてしまうくらいまで訓練するのがよいのでしょう。もちろん、アマチュアはそこまでする必要がないけれども、せめてそのようなことをうっかりするプロに後ろ指させるくらいの聴覚は持ってほしいと願います。そうしないと、私達の音楽がますます生ぬるいものになりますから。

話がそれました。

トニック・マイナーの直前で、ついつい「トゥ・ファイブ(・ワン)」にしてしまいがちな箇所であっても、「トゥ」をIIm7(♭5)にしてはいけない箇所があって、この曲もその一つ。

一般的には、ダブル・ドミナントII7にするか、そのトライトーン代理の♭VI7とするのが良いでしょう。マイナー・キーでは♭VI7は特に好まれる傾向があるようです。メロディは、前者の場合♭9のテンション、後者の場合コード・トーンの5度にあたります。