吉岡直樹のジャズ・スタンダード研究

ジャズ・スタンダードについてひたすら書きます。

I Remember You の28小節目

AABA形式の最後のAの12小節あるうちの8小節目です。

ジャム・セッションやちょっとしたライブで譜面なしでこの曲を演奏ときにいちばんバリエーションがあって迷う箇所がここではないかと思います。

メロディが2拍目から4分音符で階名「ミレド」となっています。

実際、いくつか録音をきいてみましょう。

  • 1942年、映画 The Fllet's In のサウンドトラック:1コーラス目、II7(♯5) VIm7/II / / か? 2コーラス目は1拍目II7でブレイク。
  • 1953年、Charlie Parker(Verve盤):II7
  • 1953年、Dave Brubeck/At The Collage Of The Pacific:最初のほうは曖昧だが、途中から♯IVm7(♭5)-IVm6 あたりに落ち着く。
  • 1954年、Lennie Niehaus Vol. 1 The Quintets:♯IVm7(♭5)-IVm6
  • 1955年、Chet Baker Sings And Plays:♯IVm7(♭5)-VII7
  • 1959年、Cannonball Adderley/Cannonball Takes Change:♯IVm7(♭5)-IVm6
  • 1959年、Jackie McLean/Swing Swang Swingin':♯IVm7(♭5)-IVm6
  • 1950年代後半?、Tal Farlow:♯IVm7(♭5)-IVm6
  • 1960年、Sonny Stitt Sits In With Oscar Peterson:II7-♯IIdim7
  • 1961年、Lee Konitz/Motion:1コーラス目(前テーマ)は曖昧だが、2コーラス目以降は♭IIIdim7か? ただし、ストレート・メロディにはあわない。
  • 1963年、Sarah Vaughan featuring Don Costa And Orchestra:II7
  • 1964年、Ella Fitzgerald/Johnny Mercer Songbook:II7 / / ♯IIdim7
  • 1965年、Dexter Gordon/After Hours:ピアノが曖昧。ベースを聴く限り♯IVm7(♭5)-IVm6のように聞こえる。
  • 1977年、Introducing Doug Raney:♭IIIm7-♭VI7(ストレート・メロディにはあわない)

やはりいろいろなバリエーションがあることがわかります。

この小節全体に1つのコードで演奏するにせよ、前半後半に分けて2つのコードをつけるにせよ、ストレート・メロディとコードや対応するスケールを考える必要があります。

候補となりそうな主だったコードと対応するスケール、それにストレート・メロディとの関係をまとめると次のようになるでしょう。

コード スケール
トニック・ディミニッシュ ディミニッシュ
II7 ミクソリディアンまたはミクソリディアン♯4 9 1 ♭7
IVm6 ロディック・マイナー 7 6 5
IV7 ミクソリディアン♯4 13 5
♯IVm7(♭5) ロクリアン 7 ♭6 ♭5
♭VI7 ミクソリディアン♯4 ♯11 3
VII7 半音-全音ディミニッシュ ♯9 ♭9

これを踏まえてストレート・メロディに合致するコードを選ぶことを前提とすると

  • II7(次の小節はI/V-VI7など)
  • IVm6
  • II7-IV7
  • II7-IVm6
  • II7-♯IIdim7
  • ♯VIm7(♭5)-IVm6
  • ♯VIm7(♭5)-IV7
  • ♯VIm7(♭5)-VII7

あたりが実用的な候補となりそうです。

♯VIm7(♭5)は、単独でも小節全体のメロディと合致するのですが、次の小節で進行する適当なコードが見当たらないような気がします。数時間踏ん張ることで、人類未踏のコード進行が思いつくチャンスかもしれません。