吉岡直樹のジャズ・スタンダード研究

ジャズ・スタンダードについてひたすら書きます。

I'll Close My Eyes の3-4小節目

5小節目のVIm7への(広義の)トゥ・ファイブです。そして、その「トゥ」は、VIIm7(♭5)と考えがちです。

その理由として、第一にVIIm7(♭5)はダイアトニック・コードであること。第二に、5小節目の VIm7 を平行調のトニック・マイナーと考えた場合、3-4小節目は(文字通りの=狭義の)「トゥ・ファイブ」(いわゆる、「マイナーのトゥ・ファイブ」)になりますが、この場合、トゥは多くの場合、ハーフ・ディミニッシュ・コードになると考えられているからです(しかし、いずれいくつかの記事にするつもりですが、すべてがそうなるわけではありません)。

さて、この曲の場合はどうか、ということですが、結論としては、3小節目は、VIIm7(♭5) でも VIIm7 としてもどちらでも構いません。いずれの場合であってもメロディと衝突しません。

実際いくつか音源を聴いてみましょう。

  • 1957年、Dinah Washington/The Swingin' Miss D:3小節目で内声が階名「ミ・ファ・ファ♯・ソ」と動いていて VIIm7 か VIIm7(♭5) か特定できず。4小節目はIII7alt。
  • 1957年、Kenny Burrell/2 Guitars:VIIm7(♭5) | III7 |
  • 1958年、Sarah Vaughan:VIIm7 | III7 |
  • 1960年、Blue Mitchell/Blue's Mood:VIIm7(♭5) | III7 |
  • 1965年、Jimmy Smith/Organ Grinder Swing:VIIm7(♭5) | III7 |
  • 1995年、Keith Jarrett at the Blue Note: The Complete Recordings:3小節目、前テーマはVIIm7、後テーマVIIm7(♭5)。ソロは両方。4小節目 III7。
  • 1996年、Doug Raney/I'll Close My Eyes:VIIm7(♭5) | III7 |

限られたサンプルではありますが、 VIIm7(♭5) が優勢なものの、VIIm7 というケースもありました。

個人的には、VIIm7(♭5) を基本としつつも、常に VIIm7 という選択肢を念頭にプレイできるようになりたいと思います。